短期海外研修報告 Vol.2

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ドイツの空気を吸い込んでみれば

古平 睦貴

総合政策学部3年(研修当時)
研修先:ドレスデン工科大学

 こちらのページを見つけてくださり、ありがとうございます。2022年度に総合政策学部に入学した古平睦貴です。ここでは、ちょうど先の春休みに参加した海外研修についてのお話をしていきたいと思います!(そのうち「履修者の声」のページにも別のテーマ・角度からの自身の声が掲載される予定です。)

1. 研修についての情報

研修に行くまでのドイツ語勉強歴

 入学より2年前:他大学で文法メインの授業(週2コマ)を1年間履修、その後1年のブランク
 1年次:インテンシブ2・3
 2年次:スキル(G4・G5・海外研修準備)、コンテンツ(地域論・日独社会研究)

研修中の1日の生活

 学校までは当初は30分ほど歩いて出向いていましたが、乗り換えはあるけれど10分で到着出来るトラムを次第に使うようになっていきました。授業があるのは基本的に午前中で、午後は自由時間でした。学校主催のイベントは思いの外なかったので、昼食を食べに出かけたその足で気の赴くままに街中を散策していました。夕方にはゲストハウスの近くのスーパーで買い出しをして、友人たちと集まって料理をしていました。寝る時間については日によってまちまちでした。

休日の過ごし方

 少し遠出をすることもあれば、部屋(下の写真)でのんびりすることもありました。夜は平日同様に友人と集まっての料理・談笑に加え、皆で映画を見たりもしていました。遠出の目的地としては、陶磁器で有名な近郊の街マイセン、オーデル・ナイセ沿いの街ゲルリッツ、百塔の街・チェコの首都プラハなどに赴きました。さらに、日曜日の午後には市内の任意の美術館一つが無料開放されていたので、そこを訪ねてみたりもしました。

2. 研修体験記

出発点としてのSFC

 ドイツ語は、SFC入学前から縁あって学習していた流れで何となく履修を始めましたが、続けていくにつれていつの間にかどっぷりと浸かっていくことになりました。今では研究会(馬場わかな先生「ドイツ語圏地域研究」)でも、二次大戦直後のドイツ政治をテーマに研究をしています。SFCでのドイツ語の授業はとにかくコミュニケーションをする機会が多く、ネイティブの先生方とも楽しくお話をさせてもらっているうちに、在学中に一度は現地の空気を吸い込んでみたいと思うようになりました。それ以前から長期の留学への憧れはあったのですが、持病のことを考えると難しいことは分かっていたので、せめて短期海外研修には!という気持ちで参加を決めました。履修は必須ではないですが「海外研修準備」の授業は、持病の状態以外の懸案事項を最小限に留めるという点でも個人的には大きな意味がありました。

ドイツの空気を吸い込んでみれば

 おそらく語学研修に行かれる方のほとんどが、語学力の向上や異文化交流といったところを研修の目的として挙げられると思います。ただ、私の場合は上記のような事情もあり、「健康状態に支障をきたすことなく、1ヶ月間ドイツの空気を吸い込んで過ごすこと」を目標に据えました。前持って色んな状況を想定してはいましたが、実際の研修は思いもよらない形になっていきました。まず、研修先の語学学校にいた参加者のほとんどが日本人でした。その上で、同じくSFCから来ていた学生が自分以外に何人かいて、結果的にはその子たちと行動を共にして1ヶ月を過ごしていきました。先ほど述べたような、語学力の向上や異文化交流といった観点から言えば褒められたものではないかもしれませんが、持病のケアという側面から考えると、ある程度素性の分かる(かつ恵まれたことに波長の合う)人たちが近くにいるというのは安心感を生み出します。また、基本的に出不精である私にとって、外に引っ張り出してくれるような人がいたというのは良い方向に作用しました。おそらく一人では訪れなかったような場所や景色、出来事にたくさん巡り合えました。このように、持病への不安がある程度和らげられ、かつ普段より行動的になれたことで、何よりドイツの空気をたくさん吸い込むことが出来たのです。

 言葉では中々言い表せない、と済ませてしまえばそれもまた陳腐な表現になってしまいますが、今振り返ってみても、その時吸い込んだ精一杯の空気は自分を構成するピースとしてしっくりくるなと感じます。次はそんな空気の一欠片を、少し思い出してみます。

歴史が重なり合う街

 ドレスデンという場所は、絶えず歴史の荒波に晒されてきた街です。陶磁器の製造技術を軸に栄華を極めたアウグスト教王の治世から、プロイセンとハプスブルクに翻弄された帝政ドイツの夜明け前、その歴史が一度破壊された二次大戦期、冷戦の中心部に立ったDDRの時代……それぞれの爪痕が街中の随所に色濃く刻み込まれています。そして、街の中心を往くエルベ川はその全てと、この1ヶ月の間の僕のことを静かに見守っていました。私がこの街を研修先として選んだのには、大好きなフェルメールの作品が貯蔵されているアルテ・マイスター美術館の存在があります。もちろんその絵画も十二分に堪能してきましたが、館内には「過去のドレスデン」を映した作品もいくつか展示されていました。そこには、美術館を出た先にすぐに見えるのと同じエルベ川が、その穏やかに満ちた流れと共に佇んでいたのです。それは、身に覚えのないような望郷を、私の心に預けていきました。

素敵な1ヶ月を!

 ここまでのお話は、1ヶ月というそこまで長くはない時間のさらに切れ端のようなものですが、僕にとってはしっかり意味を持っています。もしこれから海外研修に参加することを考えてる方がいれば、何か型や目的に嵌まらずともいつかの自分にとってぴったりと溶け込むような、そんな1ヶ月になればいいなと私なりに願っています。それ以外の方も、ここまでお読みいただきありがとうございました。私の体験はあくまで私の体験でしかないのですが、ここのページが皆様にとって何らかのピースとなっていれば幸いです。