こんにちは、ドレスデン工科大学に交換留学中の松本こころです。 いよいよ留学生活の始まり。経験したこと、思ったことなどをつらつらと書いてみます。
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9月 住む場所を探す
9月3日、フランクフルト国際空港に到着、電車でドレスデンへ。
最初の目標は、住む場所を探すこと。到着後、まずはホステルに滞在し、WGの部屋を探し始めました。WGとは、直訳すると「住居共同体」、シェアルームやシェアフラット、シェアハウスのことを指します。読み方は「ヴェーゲー」です。ドイツに渡航する前から、ドイツのWGという文化を体験してみたい、願わくはドイツ語を話す人と一緒に暮らしたいという思いがあり、大学の寮ではなくWGに住むことを希望していました。
しかし、WGを見つけるのは思っていたほど簡単なことではなく、9月の残暑の中、冷房のないホステルの部屋のベッドの上でスマホを片手にWGを検索し続けることから私の留学生活はスタートしました。1週間くらいあればいい部屋が見つかるだろうという甘い予想は裏切られ、9月の2週目にホステルから、仮住まいとしてインターナショナルゲストハウス(短期滞在者向けの生徒組合管理の寮)に移動しました。ところが、インターナショナルゲストハウスの部屋の空きも少なく、滞在できるのは10月の終わりまで。ここでやっと、WGが見つからない可能性がある!という危機感を覚え、大学の寮という選択肢も考え始めましたが、大学の寮もほとんどの部屋がすでに埋まっており、予約できた部屋は11月になってから入居可能とのことでした。つまり、寮に住むにせよ、10月1ヶ月を過ごす場所を探さなければならないし、そうでなければ当初の予定通り10月から入居可能のWGを見つけなければならないという状況でした。
ドイツの住宅事情
ドイツでは慢性的に住居が不足していて、借りられる部屋を見つけるのは簡単ではありません。それは日本にいる時から分かっていたことですが、渡航前にアプリで部屋を検索すると好条件の入居者募集がいくらでも出てくるので、「ドレスデンの住居事情はそんなに悪くないのかな。まあベルリンとかミュンヘンほど大都市じゃないもんな〜」と甘い予測を立てていました。
現実は、送ったメッセージに対してそもそも返信が来ない、というものでした。やっと一件だけ返信をもらえたと思ったら、それも2ラリー目にして返信が途絶えてしまいました。改めて考えてみると、このような貸し手市場で、遠い国からやって来たドイツ語の拙い学生が、ドイツ語ネイティブ学生と同じフィールドでWG探しをするなんて、かなり厳しい戦いだったのかもしれません。他の(おそらくネイティブの)応募者が書いた魅力的な自己PR文を見ては落ち込みました。たまに「外国から来た人も大歓迎です」と書いてある募集もありましたが、そもそも全員が英語を話せるわけじゃないし、他の国や文化にオープンであるとも限らないのだということをまざまざと実感させられました。ここでは私は、「まだドイツ語のままならないアジア人」に過ぎないのだろうかと悲しい気持ちになったりもしました。
滞在許可証の申請の予約も取れないし、保険証も届かないし、毎日暑いし、なぜか鼻水が止まらないし。住民登録のために緊張しながら市役所に向かった日、バス停のベンチに座った瞬間に気が緩んで、涙が出ました。あのときの気持ちは、今でもよく覚えています。大変だった……。
ついに
しかし! もう屋根のあるところで寝られさえすれば十分…と期待値を下げまくっていた私に待っていたのは、小さいけど素敵な部屋とフラットメイトでした。 3月の語学研修ですでに知り合っていた友だちに部屋を探しているという話をしていたところ、そのうちの一人がドレスデンに住むクリスチャン学生のWhatsAppグループに招待してくれました。そのチャットグループは部屋を探している人や同居人を探している人たちの掲示板のような役割を担っており、私はそこで見つけた同居人募集の一つに問い合わせました。 拙いドイツ語でメッセージを送り、家賃や諸々の条件、部屋の写真などを確認し、ビデオ通話で軽い面接のようなものを行ったのち、正式に一緒に住むことが決まりました。
WGの面接(面接というほど畏まったものではないけど)
WGに新しく住む場合や、複数人で新たにWGを始める場合、住む人たちとの相性や生活習慣が合うかどうかを確かめるために、面接のようなものが行われます。自己紹介や趣味、生活する上で大切にしたいことなどをお互いに共有します。
外国語を話すとき、自分の身体的・精神的な健康状態が、その言語をどのくらいなめらかに話すことができるかに大きな影響を与えると感じます。元気な時は言葉がすらすら出てきますが、元気がないと、言葉が詰まってしまうのです。
ここまで書いてきた通り、家探し中の私は「住む家がないかもしれない!」という不安、暑さ、謎の鼻詰まり、寂しさなど、さまざまな理由でとても弱っていました。そのせいで、今までスムーズに話せていたドイツ語さえうまく出てこなくなり、この面接をうまく乗り越えられるのか不安でした。
ところが、面接の前日、3月の語学研修ですでに知り合っていた友だちが、この面接で初めて話をしたフラットメイトの一人と近い友だちだということが分かり、「優しく話してくれると思うよ。きっと大丈夫!」と励ましのメッセージを送ってくれました。不安な気持ちを抱えつつも、なぜかこの面接では言いたいことが自然と口から出てきて、ただその場の会話を楽しむことができました。
面白かった質問は、「Bist du ein Partymensch?」。直訳すると、「君はパーティーパーソン?」つまり、家でパーティーをしたり、夜な夜な飲んだりすることが好きなタイプか?という質問です。「いや、パーティーパーソンではないよ。でも、一緒に料理したり、ご飯を食べたりできたら嬉しい。クラブとかディスコとか、そういうのはあんまり。夜は早く寝たいかも」と答えました。そういう生活スタイルは3人とも共通で、意気投合とはいかないまでも、これから上手くやっていけるような気がしました。 そんな質問をされたら、「うん、私はパーティーパーソンだよ!」なんて答える人はいないんじゃないかと思われるかもしれませんが、フラットメイト同士でお酒を飲んだりクラブに行ったりするのを楽しむタイプのWGもあるようです。
ホステル生活
渡航後最初の1週間を過ごしたホステルは、8人一部屋、共用キッチンとバスルーム付き。トイレの鏡の位置が高すぎて、平均身長の違いを文字通り目の当たりにしました。私が部屋探しとこれからの生活への不安で悶々としている中、共用バスルームにはクラブに行くためにメイクをし合うガールズ、キッチン横のバーのステージではカラオケナイト、ベッドに入っても、近くの飲食店の屋外テラス席で盛り上がる声が夜中まで聞こえます。ダイニングにも、バックパッカーカップルや高校生のグループ、会ってすぐに意気投合しビールを飲み交わす人々。普段は他の人のことや騒音は気にならないタイプで、むしろ生活に他人の気配がある方が好きなのですが、メイクガールズの横で早々に就寝前のシャワーを浴びたり、カラオケナイトの盛り上がりの横で一人、食材がこびりつくフライパンで料理をしたりしていると、不安や孤独な気持ちが何倍にも膨らむようでした。
一方で、ちょっとした素敵な出会いもありました。ブラジル出身の数学者。「キッチンのフライパンがあまりにもこびりつくけど、油を瓶一本買うのはもったいないよね」「そうなんだよ、だからベーコンから油を出す作戦」「うまく行った?」「ぜんっぜんダメだった」と、話しているうちに仲良くなり、一回だけ一緒にご飯を食べました。お互いにこれからの生活を励まし合い、連絡先だけ交換してさようなら。いつかまた会えるかな、会えないかな。ハノーファー出身の大学新1年生。同じ大学、同じ学部、WG探し中という同じ状況。私に分からない単語がある時は英語を混ぜながら話してくれて、WG探しの状況をお互いにシェアしたりしました。今でもたまーに連絡を取り合います。真っ赤な蝋(?)に包まれたベビーチーズ「Babybell」をくれたのが嬉しかったです。子どもたちに人気の定番スナックらしいです。
ホステルでの出会いの他にも、3月の語学研修で知り合った友だちが、ハイキングや美術館へ連れ出してくれたり、朝ごはんに招待してくれたり。気持ちは孤独でしたが、本当は孤独ではなかったのだと思います。一人ひとりの存在に、心から感謝しました。
というわけでホステル滞在も悪くはなかったけれど、当時の日記には、「勝手にごろごろできるベッドがあるって素晴らしい」と書いてありました。それは本当にその通り!

1年分の物資が詰まったスーツケースを担ぎ、この階段をのぼりました。

ホステルはまあまあ綺麗ですが、めちゃくちゃ綺麗ではありません。

鏡の位置が高すぎて、自分の顔が見えない。

フェーダーヴァイザー(Federweißer)。9月から10月の限られた期間のみ店頭に並ぶ、熟成途中のワインのような飲み物。スーパーなどで買うことができますが、発酵が進んでも破裂することがないよう、密閉せずに売られています。傾けないように持って帰らなければなりません。

左から順に
・ビール(ドレスデンやザクセン地方のものではないようだけど、売れていたので買ってみた)とベーカリーで買ったケーキとブドウ
・バナナさくらんぼケーキ
・いちじくとスモモ

・マウルタッシェン(Maultaschen)
・友だちと食べたラーメン。エノキの使われ方!
・黒いパンの美味しい食べ方がイマイチ分からなかったので、カフェで見たように、バターとチーズ、ベーコン、目玉焼きを乗せて食べてみました。間違いなく美味しいけれど、どれだけ一般的な食べ方なのかは分かりません。
移民の受け入れに反対する政党、AfD(ドイツのための選択肢)の本拠地があるザクセン州。その事実もまた、なんとなく私の不安を掻き立てるのでした。私はこの街に受け入れられるのだろうか…。

・夜中1時ごろ、やっと静かになったノイシュタット(Neustadt)
・ドレスデン観光の中心地フラウエンキルヒェ(Frauenkirsche)前の広場のマルティン・ルター像
・大きな庭園という名前の通り、本当に広いグローサーガルテン(Großer Garten)。そこで本を読む人

・オレンジの実のようなものがなった木をよく見かける。
・政党ポスター
・路面電車内では、「そこの席譲ってもらってもいいかい?」と自ら話しかけるお年寄りをよく見かけます。アイコンタクトだけで「譲ってくれない?」と伝えてくる人も。分かりやすくて助かります。

・カトリック旧宮廷教会(Dresdener Hofkirche)と夕日

美しい街、これからやっていけるのかな