三度目の正直
近藤 諒太
総合政策学部2023年度卒
留学先:ミュンヘン工科大学(ドイツ)
私は今、ミュンヘン工科大学の大学院で持続可能性を専攻しています。実は今回の滞在でドイツ生活は三度目。側から見れば、「ドイツがとても好きな人」と捉えられてしまうかもしれませんが、決して初めからそういう訳ではありませんでした。初めてドイツに引っ越したのが14歳の時、親の仕事の都合のためでした。英語もドイツ語もできないまま、ドイツ人しかいないインターナショナルスクールに通うことになり、毎日勉強で精一杯。とてもじゃありませんが、当時は心から「ドイツが好き」とは到底思えませんでした。2年間の滞在後、日本に帰国することになり、その時は「もうドイツに戻ってくることはないだろう」と思っていました。ところが、二度目は想像していたよりも早く訪れ、そこでの経験が、日本ではなく、ドイツの大学院を選択するきっかけとなりました。
SFCに入学後、交換留学の制度を知り、真っ先に行きたいと思った国はアメリカでした。しかし、出願時期を勘違いし、気づいた頃にはヨーロッパの国しか選択肢が残っていませんでした。それでも、留学への意思は強かったため、ヨーロッパで行ける国も模索した結果、SFCでドイツ語を学習していたのと、一度住んだことがあるからという理由でドイツを選びました。交換留学先として選択したのはミュンヘン工科大学(TUM)。その理由は至って単純で、TUMがドイツで1番の大学であり、「一度でいいから海外のトップの大学で勉強してみたい」という思いが強かったからです。当時は、「一度経験できればそれでいい」という考えだったため、SFC卒業後は、日本の大学院に進学することしか考えていませんでした。しかし、現地での生活がその考えを一変させました。
まず学業面では、授業の質もさることながら、世界中から集まった生徒達に貫禄を受けました。日本の大学とは違い、活発に授業に参加する人がほとんどで、自然と教室が議論の場に変わっていることが多々ありました。また、教室外でも多様な文化や考えを持った人達と環境問題や、廃棄物管理に対する意見を共有できました。このような場はそうそう巡り合えるものではないため、とても恵まれた環境下で学びを深めることができました。一度目の滞在時に通ったインターナショナルスクールでは味わうことのできなかった経験に強く刺激され、TUMで勉強することに楽しさを見出していました。対照的に、日常生活では困難の連続でした。銀行口座開設や、滞在許可証の申請、何をやるにも予約が必要。スーパーは20時には閉まり、電車は常に遅延。日本と比較すると、利便性を感じられる側面はあまりありませんでした。それでも、自然が沢山あり、ビールが安く、何より人との繋がりを肌で感じることができる生活の方が、自分には合っていると直感的に思い、三度目の正直として、自分の意思でドイツに戻ってくることを決心しました。
そして今現在、1年ぶりに帰ってきて、相変わらず遅延する公共交通機関や、すぐに閉店するスーパーに失望することもありますが、それ以上に得る新たな知識の多さや、出会う人達に感謝し、三度目のドイツ生活を全力で楽しみたいと思います。